WSJ-ラムバス株の強気筋、法廷での勝利がもたらす価値を過大評価か
米半導体開発会社のラムバス(Nasdaq:RMBS)が一連の特許訴訟で勝利を収めるとの観測から、強気な投資家がラムバスの株価を大きく押し上げている。
しかしラムバスが勝訴したとしても、今のような高値でラムバス株を買うのはリスクを伴うだろう。現在のバリュエーションは、法廷での勝利がもたらす価値を過大評価しているとみられるためだ。
ラムバス株は年初以来、2倍近く上昇している。9日終値は前日比42セント(1.32%)安の31.28ドル。昨年9月の水準の3倍となっており、時価総額は32億ドル近くに膨らんだ。来年の予想1株利益に基づいた株価収益率は74倍。これに対し、比較するうえで最もラムバスに近いとみられる英半導体設計会社ARMホールディングス(Nasdaq:ARMHY)は25倍だ。
ラムバス株は2000年6月に127ドルの高値をつけたが、ハイテクバブル崩壊で2002年には5ドルを下回る水準まで落ち込んだ。現在、ラムバスの収益予測を出しているアナリストは1人だけ。機関投資家の大半はラムバス株を無視している。しかし、ラムバスの特許訴訟をフォローし、それについてインターネットのチャットルームで活発に議論する個人投資家もいる。特許訴訟での勝利を予想し、ラムバス株を押し上げているのはこうした個人投資家らだ。
ラムバスは、DRAMの通信速度を高める技術の特許をメモリーメーカーにライセンス供与する戦略をとっているが、ラムバスへのロイヤルティー支払いを避けるため、一部のDRAMメーカーは代替技術を開発した。
これに対抗し、ラムバスは、米マイクロン・テクノロジー(NYSE:MU)、韓国のサムスン電子(005930.SE)、ハイニックス半導体(000660.SE)などDRAMメーカーを特許侵害で提訴している。ハイニックスとの訴訟の審理は3月13日にサンノゼ連邦地裁で始まる予定。
ラムバスは、ハイニックス、サムスン、マイクロンを反トラスト法(米独占禁止法)違反でも提訴している。ラムバスはこれらメーカーが1990年代にラムバス製品を市場から排除するため、コストおよび価格設定データを共有することで共謀したと主張している。
ラムバスに有利な判断が複数の法廷で下ったのを受け、ラムバスが勝訴するとの観測は強まった。ハイニックスを相手取った訴訟では、サンノゼ連邦地裁のロナルド・ホワイト判事が今年1月、訴えを却下するよう求めたハイニックスの申し立てを退けた。かつてラムバスと法廷で争った独インフィニオン・テクノロジーズ(NYSE:IFX)はすでに和解している。
1月11日にラムバス株の投資判断を「バイ」としたWRハンブレクトのアナリスト、ダニエル・アミール氏は、特許訴訟および反トラスト訴訟での勝利が最終的にラムバスにもたらす金額は税引き前で約9億3000万ドルに達すると予想する。このうちの約4億6500万ドルはラムバスに訴えられたメモリーメーカーが同社に支払う前払い金、残り4億6500万ドルはこれらメーカーが5年間で支払うロイヤルティーの総額。アミール氏は、2000年から2005年の間、ラムバスが約14億ドル相当のロイヤルティーを失ったと推計する。
ラムバスの発行済み株式数は1億1000万株弱であるため、4億6500万ドルの前払い金の価値は1株当たり約4.25ドルと見積もるべき、とアミール氏は言う。一方、5年間で支払われる4億6500万ドルのロイヤルティーのほうは、この5倍以上の1株当たり約23ドルと評価すべきとしている。その理由は、この業界の企業は通常、売り上げの5倍強と評価されているためという。訴訟とは関係ない部分の事業価値については1株当たり11ドルとアミール氏は評価している。これらをすべて足すことにより、向こう12カ月間の株価目標を38ドルに設定している。
他の強気筋は、これよりさらに高くラムバスを評価している。
しかしこうした強気筋の論拠には問題がある。ラムバスが実際に法廷で勝利し、9億3000万ドルを手にできるとしても、ラムバスには、現在の株価に値する価値はないかもしれない。その理由は、訴訟から得られる収入は、保険金などと同様、利益ほど高くは評価されないためだ。1株利益が1ドルの企業は通常、株価が1ドルより高い。これは利益が成長を続けるか、少なくともすぐにはなくならない、と投資家が考えるからだ。しかし4億6500万ドルの和解金はそれ以上でもそれ以下でもない。
したがって、ラムバスが受け取るかもしれない9億3000万ドルの1株当たりの価値は、約8.50ドル程度と多くの投資家や研究者はみている。これは強気派の主張する数字を大きく下回り、ラムバス株の実際の価値は20ドル以下である可能性を示唆している。
ニューヨーク大学スターン・スクール・オブ・ビジネスのアスワス・ダモダラン教授は、「訴訟和解金は現金と同種で、資産ではない。現金には株価収益率のようなものはつかず、それ自身には成長もリスクもない」と話した。