WSJ-ナイトリッダーに提示される買値、新聞業界のバロメーターに
ブルース・シャーマン氏は痛手を免れたもようだ。シャーマン氏が最高経営責任者(CEO)を務めるプライベート・キャピタル・マネジメント(PCM)は、米メディア大手ナイトリッダー(NYSE:KRI)の筆頭株主。シャーマン氏は2000年以来、顧客の資金を8億ドル近くナイトリッダー株につぎ込み、株式を18%取得した。
しかしシャーマン氏はナイトリッダーに対する熱意を失い、昨年11月、同社取締役会に対し、身売りを検討するよう要請した。レッグ・メーソン(NYSE:LM)傘下のPCMがこれまでの投資を収支トントンにするには、1株当たり60ドル以上を支払う買い手が必要だった。3月初め時点では、PCMは損失を免れないかのように見えた。しかし、米8位の新聞社であるマクラッチー(NYSE:MNI)が救いの手を差し伸べたようだ。
事情に詳しい筋によると、カリフォルニア州サクラメントに本拠を置くマクラッチー
は1株当たり67.50ドル、総額約45億ドルの買収案をナイトリッダーに提示しているという。ナイトリッダーは、発行部数でガネット(NYSE:GCI)に次ぐ米国内2位の新聞社。
マクラッチー、ナイトリッダーの関係者はいずれもコメントを避け、PCMの広報からもコメントは得られていない。
米証券取引委員会(SEC)に2月に提出された書類によると、PCMのナイトリッダー保有株は1220万株近くで、総額約7億9640万ドルを支払った。1株当たりの買値は65ドルをやや上回る水準。
ナイトリッダーの身売りは、新聞業界全体の状態を探るうえで注目されている。高い高値がつかない場合、業界全体の株価下落につながるとみられている。そうなれば、ナイトリッダーのほかにもガネット、トリビューン(NYSE:TRB)、リー・エンタープライゼス(NYSE:LEE)、ニューヨーク・タイムズ(NYSE:NYT)など、合わせて37億ドル相当の新聞株を保有するPCMにとり、大きな打撃となる。
また、1株65ドル程度の買値では、身売りを承認するようナイトリッダー取締役会を説得するのは難しいとみられていた。新聞業界アナリスト、ジョン・モートン氏は、1株65ドルの買値は、ナイトリッダーの2005年のEBITDA(利払い前・税引き前・減価償却前・その他償却前利益)の7.4倍に相当するため、割安だと言う。リー・エンタープライゼスは昨年、ピューリッツァーをこれをかなり上回る13.5倍で買収しているとモートン氏は指摘した。
ゴールドマン・サックスのアナリスト、ピーター・アパート氏は投資家向けリポートの中で、60ドル台高めの買値となれば、業界再編がさらに進むとの観測で新聞株の上昇相場につながる可能性があると書いている。しかしそうした材料なしでは、新聞株は10-15%程度割高だとした。
シャーマン氏はナイトリッダー取締役会にあてた11月の書簡で、「新聞業界全体で売り上げ成長は限られている」と指摘。競売による会社売却を促した。その2週間後、ナイトリッダーの取締役会は、戦略的選択肢を検討することで合意。買い手を見つけるため、ゴールドマン・サックスとモルガン・スタンレーと契約した。
シャーマン氏の動きの直後、ナイトリッダー株は10ドル程度上昇。その後は60-65ドルで推移している。先週10日終値は前日比2.34ドル(3.73%)高の65ドルだった。
ナイトリッダー取締役会がマクラッチーの提示する条件を受け入れたとしても、ナイトリッダー傘下の新聞とシャーマン氏のファンドの関係が切れるわけではない。運用資産300億ドルのPCMは、マクラッチーの大株主の1社で、公開株の36%を保有する。ただ、PCMのマクラッチーに対する影響力は、ナイトリッダーに対するものほどは大きくならない見込みだ。ナイトリッダーの株式が1クラスのみであるのに対し、マクラッチーは2つのクラスの株式を発行しているためだ。