世界規模でM&A加速 エネルギーと通信顕著

世界的な景気回復の流れに乗り、規模のメリットを狙う大型M&A(企業の合併・買収)案件が相次いでいる。中国やインドなどの新興市場の台頭で市場競争が激化するなか、欧米企業を中心に生き残りを目指した規模拡大の動きが加速。さらに、業績回復軌道に乗った日本企業も、手にした利益を、設備投資や研究開発よりも、短期間で成長につながる企業買収の資金に充てる動きを強めている。特に顕著なのが、競争が厳しいエネルギーや通信業界で、世界的な首位争奪戦が本格化し始めた。
 米調査会社トムソンファイナンシャルによると、世界のM&A件数と買収金額は、IT(情報技術)バブルに沸いた二〇〇〇年の三万八千件、三兆三千億ドルをピークに下降線をたどった。
 しかし、景気回復の波に乗って二〇〇五年は三万三千件、二兆五千億ドルと復調。今年は昨年同時期を上回るペースで進んでいるという。
 一方、後れを取っていた日本も追い上げる。M&A仲介業のレコフ(東京都)によれば、日本企業による海外企業の買収金額は、三月現在で三兆円を大きく超え、昨年一年間分の買収金額(一兆六千億円)の二倍以上。さらに伸びる勢いだ。
 大型M&Aで目立つのはエネルギーと通信だ。
 エネルギー分野の大型M&Aは、世界的な原油価格の高騰と、中国などの需要拡大が背景だ。仏ガス公社や独エネルギー大手エーオンなど、規制に守られていた公益企業もM&Aに参戦、国外展開も視野に置く。工業ガス世界五位の独リンデは、同二位の英BOCグループとの統合で首位となる。半導体や燃料電池の製造などを支え、成長が見込まれる分野だ。
 東芝は米ウエスチングハウス買収で、原発事業で世界トップに躍り出る。米国では原発推進を盛り込んだ包括エネルギー法案が成立、中国でも原発新設計画が相次いでおり、世界市場の開拓を目指す。
 通信は技術革新が早く「もともと合従連衡が多い」(服部暢達・一橋大学大学院助教授)分野。米AT&Tによる米地域通信大手ベルサウスの買収は、インターネットの急速な普及で、距離による事業区分が意味を持たなくなり、すべてのサービスを包括的に行う総合通信の時代が到来したことの象徴だ。
 ソフトバンクの英ボーダフォン日本法人買収もこの流れに沿うもので、日本の通信業界地図が塗り替わる可能性がある。
 日本のM&A業界の草分け的存在であるレコフの吉田允昭代表は、「現在のキーワードは『本業回帰』。製造業なら半導体に特化するなど、その道のプロになりきるために、周辺事業を売却している。どの業界もいずれ二強に絞られてゆくだろう」と大統合時代の到来を予想している。

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