政府は、肉質が軟らかいことで定評のある黒毛和種など、日本固有の和牛を知的財産として保護する検討に乗り出した。
近年、和牛と別の種を掛け合わせた交雑子牛が日本に逆輸入されるケースが増えていることから、和牛のブランド力を維持し、国内の生産者を保護するのが狙いだ。
現在、交雑子牛の輸入を制限する国内法令や国際的な取り決めはないため、政府は「人間の創造的活動により生み出されるもの」の保護などを定めた知的財産基本法に基づいた規制を考えたいとしている。
「和牛」の範囲については、景品表示法に基づき、全国食肉公正取引協議会が自主ルールを作成している。それによると、〈1〉全国で飼育されている黒毛和種〈2〉熊本、高知県などの褐毛和種〈3〉山口県の無角和種〈4〉岩手、青森県などの日本短角種――の4品種を和牛と定めている。和牛同士の交雑種は和牛と表示できない。
しかし、最近はオーストラリアなどから、和牛との交雑子牛の輸入が増えている。輸入子牛は2005年で約2万5000頭に上り、この大半が交雑子牛と見られる。輸入子牛は安価で、国内飼育農家に買い取られ、成牛になった後、出荷される。国内農家の経営を圧迫しているほか、農林水産省は「交雑牛が増えると、純粋な和牛の衰退につながる」と危機感を強めている。
ただ、国際的にも、国内法令でも、交雑子牛の輸入に歯止めをかけられる根拠はない。政府は「和牛は日本独特の改良などで作られている品種なので、知的財産と位置づけることが可能だ」として、同基本法に基づいた規制のあり方を検討することにした。
現在、農水省が内部で議論を進めている。今後、政府の知的財産戦略本部で方針を決定する見通しだ。
同基本法では、植物の新品種は保護対象に明記されている。政府は植物のケースを参考に、和牛の権利保護を検討。将来は、国際取り決めも諸外国に働きかけたいとしている。具体的には、〈1〉純粋な和牛と、別の種との交雑牛の区別を厳格にする〈2〉交雑牛の子牛輸入自体を規制する――などの制度創設を目指している。