WSJ-ノバルティスのカイロン買収が事実上確定、条件引き上げで
スイスの製薬大手ノバルティス(NYSE:NVS)は3日、米バイオ医薬品会社カイロン(Nasdaq:CHIR)買収の条件を引き上げた。これを受け、買収に反対していたカイロンの主要株主2社は、一転して買収を支持することに同意。これにより、ノバルティスによるカイロン買収は、事実上確定したことになる。
新しい条件によると、カイロン株を44%保有しているノバルティスは、未保有株を1株当たり48ドルの現金で買い取る。1株当たりの買値はこれまでの45ドルから3ドル引き上げられた。買収総額は51億ドルから54億ドルに引き上げられた。
この条件引き上げにより、カイロン株主の反乱に終止符が打たれたもよう。一部の投資家は、ワクチン製造工場の汚染問題から立ち直っていたカイロンに対するノバルティスの買収条件は低すぎると考えた。カイロンは、インフルエンザワクチン「フルビリン」を製造する英リバプール工場がセラチア菌による汚染問題で2004年に製造停止に追い込まれ、米国でフルビリンを回収した。それを受け、カイロン株は急落。一部の投資家やアナリストは、ノバルティスが1株40ドルの条件でカイロン買収を最初に提案した2005年9月初め、カイロン株はちょうど回復し始めていた時だったと主張。同年10月末にノバルティスは買値を1株45ドルに引き上げ、カイロン取締役会は提案を受け入れた。
その後、カイロン株主であるヘッジファンドのバリューアクト・キャピタル・マスター・ファンドと、レッグ・メーソン(NYSE:LM)傘下のCAMノース・アメリカの2社は、条件が低すぎるとして買収に反対を表明した。当時、買収実現には、ノバルティス以外の株主の過半数が賛成することが必要だった。ノバルティスによる買収を阻止するために必要だった株数のうち2社は合わせて約30%を保有している。
CAMとバリューアクトは、ノバルティスの新しい条件を支持することに同意した。しかしバリューアクトは積極的に支持しているわけではない。バリューアクトは先週、打開策を探るためにノバルティスの幹部と会合した。買収案を撤回する代わりにノバルティスがカイロンでより積極的な経営的役割を持つなどの案を協議した。
バリューアクトによると、もうひとつの提案は、カイロンのワクチン事業をスピンオフ(分離・独立)させ、ノバルティスがこれを買収するといったものだったという。ノバルティスはいずれの提案も拒否し、買収を実施することを主張したという。1株48ドルの条件を受け入れることは「カイロンが独立を維持し、ノバルティスがカイロン株を44%保有しつづけるという選択肢よりはまし」とバリューアクトのパートナー、Gメイソン・モーフィット氏は述べた。
買収金額の引き上げに加え、ノバルティスとカイロンは、当初の合併合意の条件も修正。これにより、買収実現はノバルティス以外の株主だけでなく、全株主の過半数が承認することが必要となった。ノバルティスの持ち株を考慮すると、買収は事実上確定されたことになる。
カイロンは買収の是非を問う投票を行う臨時株主総会を4月12日に開く予定だったが、今回の条件修正を受け、同月19日に延期した。