WSJ-「バイオックス」訴訟でメルクに損害賠償命じる評決、NJ州の陪審

米製薬大手メルク(NYSE:MRK)の関節炎治療薬「バイオックス」の長期服用が原因で心臓発作を起こしたとして、男性2人がメルクを訴えていた裁判で、ニュージャージーの州地裁の陪審は5日、2人のうちの1人に450万ドルの補償的損害賠償を支払うようメルクに命じる評決を下した。

陪審は、メルクがバイオックスの安全性問題について消費者に警告するのを怠り、2人のうち1人について、心臓発作を引き起こした責任があると判断した。

さらに陪審は両案件について、バイオックスが心臓障害を引き起こすリスクについてメルクが医師に対する虚偽の陳述を行ったことで、消費者詐欺行為を行ったとの判断も下した。

6日に始まる審理の第2段階では、心臓発作はバイオックスが起因したものだったと陪審が今回判断した原告にメルクが支払う懲罰的損害賠償金について検討する。

今回の評決は2つの重要な原則を確立することにより、広大な影響力を持つ可能性がある。ひとつは長期のバイオックス使用が強力な根拠を持つ主張となりうること。メルク自身、18カ月以上の使用で心臓発作のリスクが高まることは認めている。2つ目は、心血管リスクの高い既往症のある利用者は、心臓発作をメルクの責任とすることが依然として可能ということだ。

提訴したのはニュージャージー州在住のトーマス・コナさん(59)とジョン・マクダービーさん(77)。2人の訴訟はひとつにまとめられた。2人ともバイオックスを22カ月以上服用し、その結果、心臓発作を起こしたと主張している。

ほぼ2日間に及んだ審議を終え、女性6人、男性2人から成る陪審は、バイオックスがマクダービーさんの心臓発作に限り、責任があると結論づけた。痛みと苦しみに対する賠償金としてマクダービーさんに300万ドル、妻にも150万ドルの賠償金を支払うようメルクに命じた。また、マクダービーさんとコナさんは弁護士費用やバイオックスの治療費の払い戻しを受ける。ニュージャージー州の消費者詐欺関連法により、この合計金額は3倍となる。コナさんは135ドル、マクダービーさんは1万1904ドルを受け取る予定。

原告2人とそれぞれの案件は主な点で異なっていた。マクダービーさんはバイオックスを服用した4年間の処方記録があったが、コナさんのほうの記録はまばらで、バイオックスの7カ月間の処方を3回受け、複数の医師からサンプルを受け取ったと話していた。コナさんの弁護士、マーク・ラニア氏は、コナさんが心臓発作で傷ついたと主張したが、コナ氏は証人席でも元気で陽気にみえた。対照的にマクダービーさんは、2回腰骨を折るなど(そのうちの1回は心臓発作時)車いす生活を強いられ、かなりの援助が必要で、証言台でもほとんど聞こえない声で話した。

評決は分かれたものの、メルクの行動について統一の見解があったことは、陪審に証拠を却下するようメルクが説得するのは困難なことを浮き彫りにしている。膨大な社内資料を含む証拠は、メルク幹部が元ブロックバスター(年間売り上げ10億ドル以上)のバイオックスを2004年9月に自主回収する前から、その安全性を懸念していたことを露呈している。

マクダービーさんの勝訴は、多くの心血管リスク要因持つ患者の心臓発作について、バイオックスの責任は問われないという、メルクの主張のひとつを覆した。同社はそうしたリスク要因はバイオックスが損傷を起因したと証明するのを不可能にすると一貫して主張してきた。これまで審理されたバイオックス訴訟で、原告の弁護士は原告のリスク要因を重視しないよう求めていた。しかし今回の審理で、ロバート・ゴードン弁護士はあえてマクダービーさんが病弱で複数のリスク要因があったことを掲げ、陪審に対して彼が「バイオックスを絶対服用してはいけないはずの患者だった」ことを主張した。

メルクの弁護団の広報担当者チャック・ハレル氏は、分裂した評決は、メルク従業員らにとって「失望」されるものだとコメントした。ただ、それは「少なくともわれわれがこれまでと同様に案件を個別ベースで検討していく必要があることを示唆している」と付け加えた。

評決を受け、メルクの株価は5日の時間外取引で下げに転じている。通常取引終値は前日比0.51ドル(1.44%)高の35.99ドル。時間外では34.87ドルで取引されている。

昨年8月、テキサス州の裁判でメルクに2億5300万ドルの支払いを命じる評決を勝ち取ったラニア氏は、メルクが不適切に行動したとする今回の陪審の結論には満足していると述べた。

一方、マクダービー氏の弁護士であるゴードン氏は、今回の勝訴は「バイオックスを服用し心臓発作を起こした10万人の利用者」にとっての勝利だとした。

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