一日の会社法施行に合わせて発売した損害保険各社の「会社役員賠償責任保険」が人気だ。
同法では会社の自由度が高まると同時に、コーポレートガバナンス(企業統治)が問われ、役員らへの株主代表訴訟が多くなるとみられているからだ。
訴訟社会の米国では四十年ほど前から企業の保険購入担当者がリスクマネジャーとして活躍しているが、近年は「保険に入りさえすればいい」から「想定されるリスクを回避する」エンタープライズ・リスクマネジメント(全社的リスクマネジメント)へと役割が変わっている。
日本でも今後は、全社的なリスク管理が求められそうだ。
国内では、損保各社が訴訟費用や損害賠償金の範囲を拡大した商品を相次いで投入している。
「ここ一週間は、従来の役員賠償保険に比べて数倍の問い合わせがきている」というのは、外資系のエース損害保険。
同社は、役員賠償保険の補償範囲を拡大した「エリートエース」を今月発売した。株主代表訴訟などを起こされた場合の補償対象を役員だけでなく、経営に深くかかわる財務部長や役員秘書などの社員のほか、関連会社に社外取締役として派遣された役員も対象に加えた。
日本興亜損害保険の商品は、会社法で新たに認められた経理専門の役職「会計参与」を補償対象としたほか、訴訟が終わったときに信頼回復や社内体制再構築などを表明するための公告費用もカバーする「信頼回復費用担保特約」を設定した。
東京海上日動火災保険や三井住友海上火災保険は、役員賠償責任保険を改定。マスコミなどへの情報開示費用を補償する特約を設けるなど、各社とも万が一のための補償内容を充実させた。
「会社法では内部統制システムの整備や役員の責任明確化を求めており、経営陣のリスクが拡大している」(エース保険)ことで、役員賠償責任保険へのニーズが高まっている形で、保険加入の動きが強まりそうだ。
もっとも、米リスクマネジャー組織RIMSのエレン・ヴィンク前理事長は「企業統治は、企業の責任と自覚の下に経営がきちんと行われているかという、根本的な企業理念を問うもの」とし、保険加入だけでなく企業統治のあり方が重要と警鐘を鳴らす。