業績不振の責任を取り、今月十九日付で社長を退任した大手ハムメーカー、伊藤ハムの伊藤正視取締役(64)が二十日、東京都内で緊急記者会見を開き、「業績回復が見込める中での辞任は誠に不本意」と語り、社長退任・降格が自らの意思だけではなかったことを表明した。業績回復を担った老舗ハムメーカーの社長交代劇が、一夜にして“お家騒動”に発展する可能性が出てきた。
十九日に大阪で開いた会見に正視氏は欠席。社長交代理由について河西力新社長は、創業者の長男で正視氏の実兄、伊藤研一会長から「『非常時だから引き受けてくれ』と打診され、了承した」と説明していた。
今回のトップ人事は、伊藤正視社長が社長を辞任するとともに取締役に降格。同時に河西専務執行役員が初めて創業家以外から社長に就任することで、業界関係者からは「業績回復に向けた背水の陣」と注目された。
しかし、二十日の緊急会見に臨んだ正視氏は、「過剰気味の先行投資もこれから回収期に入る。徐々に収益を上げることになる」と述べ、自身の経営に誤りがなかったことを強調。社長交代については「非常時」とした兄の研一氏との間に確執があったことを暗示した。
しかも、弁護士同席という異例の会見の出席者は、前日に取締役に降格人事が発表されているにもかかわらず「代表取締役社長」の肩書のままの正視氏のみ。人事については自ら辞任を申し出たことは認めたものの、質問はほとんど受け付けず、不満を一方的にぶちまけただけだった。
説明責任という点ではより不透明さを増しただけの会見。わずか二十分ほどで退席した創業者一族の姿勢はむしろ、今後に波紋を広げそうだ。