福井日銀総裁の村上F資金拠出で波紋、ゼロ金利解除観測の後退も
福井日銀総裁が証券取引法違反容疑で逮捕された村上世彰前代表が率いる村上ファンドに1000万円を拠出していることが明らかになった問題が波紋を広げている。きょうの東京株式市場は600円を超える今年最大の下げ幅となったが、一因に福井総裁の村上ファンドへの資金拠出問題を指摘する声もあり、金利市場ではゼロ金利解除観測も大きく後退することとなった。野党からは福井総裁に道義的責任を求める声が相次いでいるが、政府・与党はからは責任を問うべきではないとの指摘が聞かれる。
<アドバイザリー契約はなし、報酬も得ておらず>
福井総裁は、富士通総研在職中に村上氏と知り合った。1999年に村上氏が旧通産省を退職し、日本のコーポレートガバナンス改革のために活動したいという考え方を高く評価。資金集めに自信がないとする村上氏に対し、富士通総研有志数人でひとり1000万円を拠出したという。
その利益がどの程度出ているかについては「よく分からない。一文もキャッシュアウトしたことはない。帳簿上の利益は分離申告し、納税している。たいした金額ではない」と述べた。
このほか「村上ファンド関連会社の役員をしていたことはない」と述べた。さらには、投資活動へのアドバイスはしないものの、コーポレートガバナンスのアドバイスを行う約束をしたが「アドバイザリーボードメンバー契約は存在しないし、報酬も存在しない」と語った。
<ファンドへの出資は数カ月前に解約申し入れ>
ファンドへの出資は「数カ月前に解約を申し入れており、受理されている。しかし、申し入れてもすぐに解約にはならず、決算期である6月末に清算されると思う」という。
日銀総裁就任時に解消すべきではなかったかとの指摘に対しては「就任時にアドバイザーは辞めた。ファンドへの拠出を止めることもひとつの考え方だったと思う」としながらも、「私だけが、あの時点で抜け出すことが適当かは、富士通総研の仲間うち意識があった。また、このファンドは一切投資家の指図で動くわけではない、完全な一任勘定。他の投資信託と同じように、このまま置いた。利殖の対象として操作可能なものではないという認識だ」と解約せずに継続した理由を説明した。
大門委員(共産)が、今までの運用利益を委員会に報告して欲しい、と求めたのに対し、総裁は「委員会として要請があれば、もちろん。別に秘密を守る利益はない」と述べた。委員長は「理事会で協議する」とした。
この点について日銀政策広報は「内部服務ルールに違反していないものと理解している。拠出金にかかる所得については、服務ルールに沿って適切に処理されていると認識している」とのコメントを発表した。
日銀は、服務ルールとして「職務上知ることができた秘密を利用した個人的利殖行為は、厳に行ってはならない」などと定めている。
なお、この件に関し、現時点で記者会見などの予定はないという。
<日経平均は今年最大の下げ幅、ゼロ金利解除観測も後退>
きょうの東京株式市場で日経平均株価は前日比600円を超える今年最大の下げ幅を記録、1万4218円と年初来安値を更新して取引を終えた。日本のファンダメンタルズに大きな変化が見られない中で、米国や新興国の株価下落が継続、海外主導の株安が背景と見られているが、福井総裁の村上ファンドに対する資金拠出問題も無縁ではない。
株式市場関係者からは、「ネガティブな反応になりやすいが、資金拠出の話は本質的には気にすることはない」(国内証券ディーリング部チーフディーラー)との声も聞かれるものの、市場の地合いが悪い中で、福井総裁の村上ファンドに対する資金拠出問題は「タイミングが悪い」(国内証券)というのが一致した見方だ。
「もし(福井総裁が)辞任することになれば、金融政策に一時的な空白ができ、後任がだれになるかで影響が出るかもしれない」(国内証券ディーリング部チーフディーラー)と市場の不安心理を増幅させた面があるようだ。
こうした株価急落と村上ファンド拠出問題を受け、国内金利市場ではゼロ金利解除観測が後退している。10年最長期国債利回り(長期金利)は1.8%を割り込み、約2カ月半ぶりの1.770%に低下した。
リーマン・ブラザーズ証券チーフJGBストラテジストの山下周氏は「日銀が7─9月にゼロ金利解除に踏み切ったとしても、株安でその後の連続的な利上げに対して、自信が持てなくなった投資家が増えているのだろう」と分析。
日銀前審議委員の中原伸之氏は、自民党内で記者団に対し、今回の問題とゼロ金利解除との関連について「第三者から見れば微妙に絡む」と金融政策に影響が出る可能性を指摘している。
<福井総裁の道義的責任問う野党、政府・与党は「責任ない」>
共同通信によると、民主党の渡部国会対策委員長は「大問題だ。常識では全く考えられない。本人の辞任は当然ながら、政府、小泉首相の責任も免れない」と発言した。
委員会で質問に立った大門委員(共産)も、金融政策をつかさどる日銀総裁の自覚が足りないとし「引き続きこの問題を明らかにしていきたい」と追及の手を緩めない姿勢を強調した。
一方、小泉首相は官邸で記者団に対し、福井総裁の道義的責任について「ないのではないか」と述べた。安倍官房長官も午後の記者会見で「日銀の内規には触れていないと承知している」とした上で「(日銀総裁の交代は)考えていない」との認識を示した。与党からは、片山自民参院幹事長が「(福井総裁の)進退問題まで言うのは酷」と発言している。
与謝野経済財政・金融担当相は「総裁になる前、総裁になることが予想されていない時期に、民間の方として出資に応募したことは、何ら問題がない。総裁に就任するときに、どう始末するかは福井総裁自身の判断。総裁就任が予想される前から持っているものの処分はご本人の意思次第。それを不適切と言う根拠は見出せない」と述べた。