ミタル買収案受け入れ アルセロール、流れ変えた株主対策

セベルスタリと一転“破談”
 アルセロールをめぐる鉄鋼業界のM&A(合併・買収)は、ミタル・スチールによる買収という大逆転劇で決着した。アルセロール経営陣は、ミタルへの敵対的な姿勢を崩さなかったが、対抗策として打ち出した露セベルスタリとの合併計画は、ミタルの巧みな株主に対する世論操作により突き崩された。
 「モンキー・マネー(猿の金)」
 米紙ウォールストリート・ジャーナルによれば、1月にミタルに敵対的買収を仕掛けられたアルセロールのドレ最高経営責任者(CEO)は、こう吐き捨て、ミタルへの嫌悪感をあらわにした。
 ミタル・スチールのラクシュミ・ミタル会長はインド出身。相次ぐ企業買収で勢力を拡大し、昨年世界最大手に上り詰めた。私生活ではロンドンの最高級マンションに居を構え、娘の結婚式にはフランスの宮廷を借り切るなど、インドのマハラジャ(王侯・貴族)を思わせる派手な生活ぶりで知られる。
 ドレCEOは、欧州の伝統的な企業風土を守ってきたアルセロールを、資金力にものをいわせ簡単に買収しようとするミタルに強い敵対心を燃やしたとみられる。
 そしてミタルからの買収を逃れるため5月、ロシア鉄鋼大手セベルスタリとの合併計画を電撃発表した。
 ドレCEOは1990年代から親交があるセベルスタリのモルダショフ会長を「欧州の企業価値をより良く理解している」と評価しており、「ホワイトナイト(買収防衛に協力してくれる友好的企業)」役にはうってつけと判断したのだ。
 しかし、株主への根回しが不十分なまま、水面下で進めてきたこの計画に株主は不満を強めた。
 セベルスタリの経営内容に関する情報が不足していたことに加え株主総会で発行株式数の50%以上の保有者の反対がなければ合併を決定するといった経営陣の強引さも裏目に出た。
 6月下旬に入り、ルクセンブルク政府がセベルスタリとの合併に反対する意向を明らかにしたことで、合併破棄が決定的となった。
 この間、ミタルのミタル会長は、アルセロール株主の権利が踏みにじられている、とする全面広告を欧州主要紙に出し、セベルスタリとの合併に反対するよう呼びかけるなど、最後の賭けに打って出た。
 ミタルは、市場からのアルセロール株買い付けだけでは過半数を確保できない情勢にあったが、ミタル支持の声が徐々に広がり、アルセロール経営陣を追い込んだ。
 セベルスタリとの合併が破綻(はたん)に至った背景には、モルダショフ会長が新会社の株式38%を握るとする計画への不信感もあった。モルダショフ会長はプーチン露大統領と親しく、ロシアがエネルギー分野で進める国家戦略に巻き込まれかねないとの懸念が強まった。
 ドレ会長は一貫して欧州の鉄鋼畑を歩んできた鉄鋼エリート。アルセロールの前身である仏ユジノール時代から同社の経営を支えてきたが、株主を軽視したことが挫折につながったといえる。
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≪セベルスタリが提訴へ≫
 セベルスタリは26日、アルセロールが同社が事前通告なく合併案を撤回したことに「あらゆる手段を考慮する」と述べ、事実上法的手段に訴えることも辞さないとする声明を発表。ロイター通信によれば、セベルスタリは合併をあきらめてはおらず、数日以内に再び対抗策を提示する考え。
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≪ミタルのアルセロール買収をめぐる動き≫
 1月27日 ミタルがアルセロール買収計画を発表
 2月21日 アルセロールがカナダのドファスコ株88.38%を取得
 4月 4日 アルセロールが株主らへの配当金引き上げを発表
 5月18日 ミタルがアルセロールに株式公開買い付けを開始
   19日 ミタルが買収額を34%引き上げると発表
   26日 アルセロールがセベルスタリとの合併を発表
 6月25日 アルセロールが取締役会でミタルの買収案受け入れを決定

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