住商が1号 国営買収に道
中国が1年ぶりに新規株式上場を再開すると発表し、株式市場改革の道筋が付いたのを機に、日本企業の中国国営企業や上場企業のM&A(企業の合併・買収)が活発化しそうだ。
住友商事は3月、中国国営医薬品企業に20%を出資し、資本参加の手続きを完了。市場に流通しない国営企業の非流通株を普通株へ転換することで買収に成功した初の事例となった。
中国は昨年12月、上場企業の買収に道を開く新法を施行しており、住友商事は同法を活用して今後出資比率を引き上げることも検討している。
中国国内市場は、商習慣が違う上に債権回収が難しいなど特有の課題がある。住友商事が国有企業を買収したのは急成長する中国市場で「欧米日本の製薬会社のライセンスを中国に供与し、早期に販売チャンネルを構築する」(木村榮住友商事メディカルサイエンス部長)のが狙いで、今後買収で早期にブランド浸透を図りたい日系企業のモデルケースになりそうだ。
住友商事が出資したのは中国河南省の大手国営医薬品会社「河南天方薬業股分」。まず、非流通株を持つ地方政府が保有する70%の株式のうち20%を購入。その後、流通株式に転換するが、その際に既存の株主らが保有する29%分の株式価値が下がらないように補填(ほてん)する手続きを実施し、非流通株を普通株に転換する株式市場改革を実現した初のケースとなった。
従来は国営企業の株式は一部は市場に流通するが、国や地方政府が企業支配を続けたいがために保有する「非流通株」が大半で、外資が国営企業に出資、買収するのは事実上難しかった。
住商の事例は先例がないだけに買収発表から手続きに1年4カ月をかけたが、今後は簡素化される見通しだ。
手続き調整には河南省政府、商務省、外国為替管理局、国有資産管理委員会など多方面の利害関係者がからむほか、企業価値をどう評価するか、情報開示、既存株主への対価支払いなどの一連の手続きが必要になる。
今回の事例の法律面を代行した大手国際法律事務所のポール・ヘイスティングス・ジャノフスキー・アンド・ウォーカーは米国での豊富な買収経験を基に、中国国営企業の情報開示などの問題点も考慮。手続き完了時に買収金額全てを支払うのではなく、一部を留保して数年後に支払うホールドバックと呼ばれる欧米流のリスク回避手法も取り入れた。
一方で日系企業による国有企業以外の中国企業買収件数は05年に2年連続で過去最高となるなど増加傾向にある。M&A専門会社のレコフによると、2005年の日本企業による中国本土企業のM&A件数(資本参加も含む)は前年同期比で22・5%増の49件だった。
国内販売強化のための戦略買収が目立ち、サントリーが上海でシェア第2位の上海東海ビールを買収し、上海での市場シェアを向上させた事例(昨年1月)や、東京海上日動火災保険が天安保険(上海市)に資本参加し、全国販売網を構築した案件(昨年12月)がある。
中国では昨年12月に外国投資家が人民元建ての株式市場(A株)に上場する企業の株を取得できる「外資による上場企業への戦略投資管理弁法」が施行された。ポール・ヘイスティングスでは「この新法が今後上場企業買収の切り札になるほか、非流通株解消にめどがついたのを機に今後、日系企業の戦略買収や機関投資家の投資が加速するのは間違いない」(上海オフィスパートナーの新井敏之弁護士)と予想している。
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【用語解説】中国の株式市場改革
従来、国や地方政府などが保有する「非流通株」は上場する国営企業の発行済み株式の約60%を占め、株式市場の健全な育成のネックとされてきた。そこで昨年春以降、非流通株を通常の株式に転換することで解消し、株式市場を正常化する株式市場改革を進めてきた。現時点で非流通株の解消を進めたか、手続き中の国営企業は900社を超え、全体の約3分の2に達した。政府は昨春以降、改革を優先するため新規株式上場(IPO)や公募増資を凍結してきたが、このほど、6月に約1年ぶりにIPO(北京市の中工国際工程)を再開すると発表、市場関係者は株式市場改革にめどが立ったと受け止めている。