産総研 有機ナノチューブ大量合成 医療分野など応用期待

産業技術総合研究所(産総研)は20日、有機分子でできたナノチューブを大量に合成できる技術を開発したと発表した。有機ナノチューブは炭素原子でできたカーボンナノチューブよりも水中への分散性に優れ、タンパク質や核酸などの大きな分子を内部に取り込めるため、医療、健康などへの応用が期待できるという。
 作製した有機ナノチューブは、水に溶けやすい親水部と油に溶けやすい親油部を持つ「両親媒性分子」を水中で自己重合させて合成する。
 これまでも、こうしたものの合成が行われてきたが、重量にしてナノチューブの1000倍から1万倍もの大量の水を必要とした。

 さらに分子を最終的にチューブ状集合体に形態を変化させるための処理が必要で、実験室レベルで1グラム以上の量を継続的に作るのは難しいとされてきた。
 今回、産総研は科学技術振興機構のプロジェクトの一環で、食品材料に用いる糖やペプチドといった低コストで安全な原材料を用いて両親媒性分子を設計・合成し、エタノールなどの安全な有機溶媒中で自己集合させることに成功した。
 ナノチューブ原料をよく溶かす有機溶媒を使用しており、溶媒使用量を従来の1000分の1から1万分の1に削減しながら、1キログラム以上の固体粉末の製造に成功した。水中では多くのステップを経てチューブ構造を形成したが、わずか1段階で大量合成ができた。水でなく有機溶媒のため、乾燥工程も短い。
 薬効のある分子などを内包するものとしてシクロデキストリンという有機分子が利用されているが、有機ナノチューブはより大きなタンパク質、核酸、ウイルス、金属粒子などを内包できるサイズ。今後、医療、健康のほか、農業、食品、環境などさまざまな分野への応用に向けて開発を進めるという。