WSJ-米オートマチック・データ、広く報道された失敗を克服できるか
給与計算代行サービスの米オートマチック・データ・プロセッシング(ADP)(NYSE:ADP)は今月、上場企業の幹部を装った人物にだまされ、顧客の個人情報を流出させたことを明らかにした。さらに、同社は米国の月次雇用データの予測をしているが、政府の公式発表の数値とかけ離れた数値を発表し、債券市場を混乱させた。
それでも、ADPには、投資家を喜ばせる隠れたそれも増加している巨大現金資産があり、金利が上昇した場合、他の銘柄よりよいパフォーマンスが期待できるビジネスモデルがある、というアナリストがいる。
ADPの株価は42ドルを超えており、とりたてて割安というわけではない。PER(株価収益率)は22倍、S&P500種指数採用銘柄の平均16倍に対してかなり高い評価だ。しかし、52週高値からは11%低い水準にあり、ダウ・ジョーンズ金融管理業務指数を構成する11銘柄の平均22.5倍よりは低い。
ニューヨーク市場での26日の終値は、前日比64セント(1.5%)安の42.63ドルとなった。時価総額はおよそ250億ドルだ。
ドイツ銀行証券のアナリスト、ブラント・サカキニー氏は、「ADPは割安だ」と判断しており、ADPの投資判断を「バイ」にしている。
ADPはここ2週間ほどADPの株価が低迷しているが、リーマン・ブラザーズ・エクィティ・リサーチのアナリスト、ガリー・ビスビー氏は、最近報道された悪評のためではないかという見方を示す。ビスビー氏のADPの投資判断は買い推奨のバイを意味する「オーバーウエート」だ。
従業員給料計算のほかに、ADPは証券業務を行っており、株主あての委任状説明書や財務報告書の配布などの業務をしている。ADPが今月明らかにしたのは、いろいろな上場企業の幹部になりすました人物が株主リストを要求したのにだまされたことだ。この株主リストには、株主の名前、住所、所有株数などが記されている。
ADPがデータを渡したのは、2005年11月から2006年2月の期間だが、だまされたのに気付き連邦政府当局に注意喚起した。ADP広報ではこれ以上のコメントは差し控えた。
この失敗にさらに輪をかけたのが、ADPが経済コンサルタント会社「マクロエコノミック・アドバイザーズ」と共同で最近発表した経済リポート。ADPが6月の就業者増加数を36万8000人と予測したのに対し、実際に公式発表された数字は9万人だった。
ADPは数多くの給料支払いの手掛かりがあり、労働市場の趨勢について卓越した識見をみせる可能性を持っている。ADPは実際よりも30万人近くも多めに予想したため、景気は上向いておりインフレ圧力は高まっていると判断した債券投資家をあわてさせた。株価も下がった。
ADPの広報は、「ADP全国雇用情報」の絶えざる改善改良に努力しているとコメントした。
とはいえADPの市場シェアは30%で業界最大手だ。これを追う2位のペイチェックの市場シェアは10%程だ。米国内のADPの顧客はおよそ50万社、扱う従業員数は2300万人だ。401Kプランや企業の経費管理システムの運営なども手掛ける。さらに海外からは900万人が同社を利用している。
ADPは従業員一人ひとりの給与処理に手数料を取る。さらに、顧客が従業員に支払う賃金や税金の資金を振り込む場合、ADPがその資金を数日間、銀行の口座に保管するが、この時に金利がつく。3月31日の口座残高は220億ドルだった。
2000年以後、これらの支払われた金利はADPの税前利益の21%-29%を占めてきた。投資家はこの支払われる金利がADPの利益に対して持つ重要性がよく分かっている。2001年にFRB(米連邦準備理事会)が金利を下げた時、ADPの株価は下がった。最近では逆が起きていた。FRBは2年間で17回連続で金利を引き上げてきた。
ADPには、証券業務部門で注意しなければいけない点もある。証券業界ではADPが行っているバックオフィス業務の手数料を引き下げるよう圧力をかけてきた。バックオフィス業務の平均料金は下がってきている(リーマンのビスビー氏)。これによってADPの証券業務部門の利益率は悪化している。
証券業務部門が、ADPの売上高全体に占める割合は、アナリストの予想によるとおよそ20%だ。だが、今後数年にわたって1取引当たりの手数料が縮小するため、占める割合はさらに減少すると見込まれている。景気の悪化が急速に進めば取引量が縮小するかもしれない。