ドイツの鉄鋼大手ティッセンクルップ(TKA.XE)は11日、北米自動車部品部門の一部を売却する方針を示すとともに、カナダの鉄鋼大手ドファスコ(DFS.T)買収が実現しない場合には23億ユーロ(29億4000万ドル)を投じて米国に製鋼所を建設する計画であると発表した。
また、4-6月期(2006年9月期の第3四半期)の好調な決算とともに、シュテファン・キルステン最高財務責任者(CFO、45)が11月末付で退任すると発表し、市場を驚かせた。同氏の任期は来年7月までで、エッケハルト・シュルツ最高経営責任者(CEO)の後継候補の1人と目されていた。同社は退任理由をはっきり示していない。
フランクフルト証券取引所での同社株の終値は、前日比2.17ユーロ(7.68%)安の26.10ユーロとなった。
ティッセンクルップは、北米の自動車車体部門の売却を目指し、売却先候補と交渉を続けている。同部門の年間売上高は約10億ユーロで、4000人の従業員を抱えている。売却しようとしているのは、米ミシガン州トロイに本拠を置く北米自動車部品部門の約半分で、経営陣はかなり前から売却を検討していることを明らかにしていた。
米国での工場建設については、ブラジルで生産した厚板を加工する熱間圧延工場を建設するとの暫定計画を明らかにした。年間生産能力は薄板炭素鋼450万トンで、18億ユーロの投資が必要だとしている。さらに、溶解工場と冷間圧延設備に5億ユーロを投資する見通しで、候補地はアラバマ州、アーカンソー州、ルイジアナ州を挙げている。ただ、シュルツCEOは「経営陣の最優先課題はドファスコ買収だ」としている。ティッセンクルップは昨年、ドファスコに数十億ドルで買収提案した。
だが1月、ティッセンクルップはドファスコ買収で、業界大手であるルクセンブルクのアルセロール(5786.FR)に敗れた。アルセロールはオランダのミタル・スチール(NYSE:MT)に買収されることになっている。ミタルは今年、アルセロール買収が実現すれば、ドファスコをティッセンクルップに54億カナダドル(48億ドル)で売却することで合意した。だがその後ミタルとアルセロールは、アルセロールがドファスコをオランダの信託基金の傘下に置いたため、ドファスコをティッセンクルップに合法的に売却するのはもはや不可能とみられるとの見方を示している。ティッセンクルップは、「今後数日間」交渉を続ける方針で、交渉は来春まで続く可能性もあるとした。
同社がこの日発表した4-6月期決算は、純利益が4億6800万ユーロ(前年同期は2億5800万ユーロ)と81%増益、売上高は8%増の121億4000万ユーロだった。
アナリストは、この好決算を歓迎するとともに、同社の多額の債務削減を指揮してきたキルステンCFOの退任に懸念を示した。米国に工場を新設すれば生産能力が過剰になり価格低下につながるとの声も聞かれた。また、ドファスコ買収は厳しいとの見方が多い。