中国政府は、過熱経済の主要な要因となっている固定資産投資(公共投資と企業設備投資)を抑制するため、新規の大規模プロジェクトの着工などを見直すことを決めた。今年上期(1~6月)の国内総生産(GDP)成長率が10・9%と2・4半期連続で2ケタで推移したことに、政府当局者は危機感を募らせている。
新華社電によると、中国国家発展改革委員会、国土資源省、銀行業監督管理委員会など関連部門はこのほど「新規着工プロジェクトに関する通達」を発出。製鉄、電解アルミ、コークス、自動車、セメント、電力、紡織産業の分野で、3000万元(約4億3500万円)以上のプロジェクトについて見直す方針を明らかにした。
石炭産業では、年産3万トン以上の採掘施設が改めて審査を受ける対象となる。
発展改革委幹部は、「新規に着工するプロジェクトに対する投資は、認可に至る過程や土地利用の許可、環境アセスメント、資金調達などの面で問題があり、政府の規定に違反している事例もある」とし、全面的に見直しを進めていく考えを強調した。
中国国家統計局の資料では、上期の都市部における固定資産投資の伸びが前年同期比31・3%増となり、過去3年で最高の水準となった。
全国の主要8省、市、自治区で、新たに着工を計画している建設プロジェクトの投資総額は同50%以上増えており、過熱投資に歯止めがかからないでいる。
都市部の新規プロジェクトで投資額が1億元(約14億5000万円)以上の案件は、全体の40%を占めている。
このため、生産能力の過剰など産業政策の転換を図るためにも、投資ラッシュが大きな制約要因となっており、構造調整を阻んでいるのが実情だ。
農地を転用して工業施設などを建設するプロジェクトも、地方政府の計画に対する審査や認可に至る過程が不透明で、環境保護を無視した例が少なくない。
マクロ経済調整の観点からみると、固定資産投資が増大し続けることは、金融機関から企業などへの貸し出しが増えることで信用の膨張を招き、バブル経済化を進行させることにつながる。
中国人民銀行(中央銀行)は、金利や預金準備率の引き上げなど一連の金融引き締め策を打ち出しているが、政府が行政手続きの面での審査を厳格にすることで不要不急な投資プロジェクトを押さえ込もうというのが、今回の通達の狙いだ。
見直し作業は8月末をめどに完了するよう指示されており、地方政府は所管する地域内の新規プロジェクトの内容の精査を急ぐことになる。
発展改革委幹部は、「今回の措置で、建設投資の秩序を正常化し、地方幹部の責任を明確にすることができる」と話している。
中国政府が具体的な条件を明示して、投資プロジェクトの抑制に乗り出したことは、安定成長への転換を目指す中央の方針に反して、無計画に投資を続ける地方政府や企業に対する危機感のあらわれでもある。
新規プロジェクトの見直しで固定資産投資の伸びが鈍化傾向に向かうか。
投資主導型から消費牽引(けんいん)型の成長モデルへの転換を図り、年間8%程度の成長率への軟着陸を政策目標として掲げている胡錦濤国家主席(中国共産党総書記)と温家宝首相が率いる政府指導部のマクロ経済コントロールに対する実行力が試されることになる。