WSJ-テック・コミンコ、インコ買収提示額引き上げを取りやめ

カナダの鉱業大手テック・コミンコ(NYSE:TCK)は16日、前日に明らかにしていた同業インコ(NYSE:N)への買収提示額引き上げを取りやめると発表した。テック・コミンコは、提示額を200億3000万カナダドル(178億3000万米ドル)にするとしていた。

これでインコへの買収提案は、ブラジルの資源大手リオドセ(NYSE:RIO)による、193億5000万加ドル(1株当たり86加ドル)の全額現金による提案が最有力になったように思われる。インコは引き続き、米産銅大手フェルプス・ドッジ(NYSE:PD)の現金と株式交換の組み合わせによる買収提案を支持しているが、株主は全額現金での買収提案を望んでいるとみられる。フェルプス・ドッジの提示額は、16日終値に基づくと、1株当たり89.31加ドル。

テック・コミンコは、機関投資家向けに57億3000万加ドル相当の新株を発行してインコ買収資金の一部に充てようとしていたが、合理的な条件での新株発行ができなかったとしている。テック・コミンコの広報担当者によると、新株の発行条件が原因で引き受けをためらった一部の投資家は、同社の提示額より低い価格であれば引き受けに同意していたとみられる。テックの新株発行予定価格は明らかにしなかった。

テック・コミンコは、現金と株式交換の組み合わせでインコ株1株当たり89加ドルとした最新の提示内容を「最良かつ最終」としていた。提示額引き上げ前は同87.74加ドルで、現金部分が少なかった。従来の提案内容の有効期限は16日深夜零時だった。

中国などでのニッケルや銅などの強い需要が長期間続くとみられるなか、資源業界の買収合戦は熱を帯び、鉱業各社の株価は上昇を続けている。だが、短期間であっても資源銘柄の株価が調整されるのではないかとの懸念から、投資家の買い意欲はあまり強くない。

信用調査会社ギミー・クレジットの調査責任者、キャロル・レベンソン氏は、調査リポートで、テック・コミンコが新株発行の困難に直面したことを引き合いに出し、「株式売り出しによってこのような多額の資金を調達するのは、想像しているよりも難しい」と指摘した。

ナットキャン・インベストメント・マネジメントのポートフォリオマネジャー、ベノイト・ブリロン氏は、テック・コミンコの新株引受を打診されたが、同氏の運用資産60億加ドル相当のうち約2%をすでに同社株が占めているため断ったという。同氏は、「これ以上同社株の持ち分を増やす必要はない。ただ、現在保有している同社株については満足している」とした。同氏が数年前にテック・コミンコ株を取得した時の株価は10-12加ドルだった。また同氏は、「テック・コミンコは、議決権の異なる2種類の株式の混在を解消する良い機会を利用すべきだった。2種類の株式が混在すると、バリュエーションが限定的になるうえ、カナダのキービル一族と住友金属鉱山(5713.TO)が議決権を支配することになる」と指摘した。

ニューヨーク証券取引所でのインコ株の16日終値は、前日比2.42ドル(3.03%)安の77.33ドルだった。リオドセの米国預託証券(ADR)は、同0.52ドル(2.38%)高の22.34ドルとなった。テック・コミンコのクラスB株は、同2.17ドル(3.05%)高の73.38ドル。

フェルプス・ドッジの広報担当者はコメントを避けた。リオドセの広報担当者は、テック・コミンコのインコ買収提示額引き上げの取りやめについて分析しているところだとした。

インコは、リオドセの買収提案を支持しているわけではなく、リオドセに提示額の引き上げを迫るかもしれない。だがリオドセは、インコ株主が現行の提案内容を支持すると考えているかぎり、提示額を引き上げる必要はないとみられる。

テック・コミンコの従来の買収提案が期限を過ぎたといっても、同社がインコ買収を試みたことは有意義だった。最初に買収提案をした5月までに、テック・コミンコはインコ株890万株を取得しており、それ以降、インコの株価は大幅に上昇した。

フェルプス・ドッジは、インコ買収が実現しない場合、多額の収入を手にする。インコは、他社からの買収提案を受け入れれば、4億7500万ドルの違約金をフェルプス・ドッジに支払うことで合意している。

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