東京証券取引所の西室泰三社長は22日会見し、みずほ証券が昨年12月のジェイコム株式の大量誤発注に伴って被った407億円の損失に関し、同証券が東証に対して404億円の損害賠償を求める催告書を18日に送付してきたことを明らかにした。催告書は9月15日を支払期限とし、支払いがない場合は民事訴訟など法的手段を講じるとしている。
これに対して西室社長は会見で、「催告に応じるつもりはない」と明言。誤発注問題の後始末は、証券会社が“夫唱婦随”の密接な協力関係にある取引所を訴えるという、前例のない法廷闘争に突入することがほぼ確実となった。
みずほ証券は昨年12月8日、東証の新興市場マザーズに新規上場した人材派遣のジェイコムに対し、「61万円で1株」と入力するはずの売り注文を、「1円で61万株」と誤って発注。発行済み株式数を大幅に上回る売り注文で市場に混乱を招いた。
ただ、この誤発注をめぐっては後日、みずほ側の誤発注の取り消しを、東証の取引システムの欠陥によって受け付けられなかったことが分かった。みずほは、取り消し注文が適正に処理されていれば、誤発注に基づく売買は膨らまず、取引決済に伴う損失も少額にとどまったと主張。東証の取引システムの不備を損害賠償の根拠としている。
一方、東証は、取引所を利用する証券会社との契約規定に、「取引所は故意または重過失が認められない限り、賠償義務を負わない」ことが明記されていることを理由に、終始一貫してみずほ側の賠償要求を拒否。
3月以降、両者間で計11回に及んで意見交換を行ったが「基本的な主張があまりに違い過ぎる」(西室社長)ことから溝をまったく埋められず、「話し合いによる合意が非常に難しい状況」(同)になっていた。
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■証券市場にはプラス
ジェイコム株の誤発注問題が法廷闘争に持ち込まれる見通しとなったことは、むしろ証券市場にとって歓迎といえる。
この誤発注をめぐっては、実際には存在しない大量の株式売買を、関係機関が前代未聞の強制決済という手法で処理するなど、多くの投資家や証券会社が迷惑を被った。ずさんな取引管理は東京市場の信頼性を大きく傷つけたことからも、責任の所在はみずほ証券と東証だけの協議で処理される性格のものではない。
訴訟になれば、東証が主張する契約規定の重過失という解釈が焦点となる見込みで、取引所と証券会社の責任分担の範囲、取引システムの欠陥を招いた富士通のメーカー責任などが公の場で明らかになる。その結果は取引集中によるシステム停止や、ライブドア事件以降の上場企業の不祥事などで問われている取引所と証券会社のあり方の議論にも大いに有益だ。
西室社長も、透明性の高い法廷闘争について「決してネガティブな印象はない」としており、訴訟という選択は、株主への説明責任という観点からも両者が能動的に選んだともいえる。