中国の国会にあたる全国人民大会(全人代)常務委員会がこの27日、企業破産法を賛成157票、反対2票、棄権2票で採択した。金融市場の対外開放を視野に、銀行など金融機関に関する規定が盛り込まれたほか、破産法の成立で、企業が破産した後の清算手続きが明確になる。これまで破産にあたって特別扱いされてきた国有企業の従業員も同法によって処遇されることになる。
新華社電によると、中国では改革開放路線が本格化した1986年に主に国有企業を対象にした破産法が定められた。
その後、94年から新しい破産法の法案が起草作業に入り、2004年に正式に全人代に提出され、審議が続けられてきた。
■法的手続き整う
常務委首脳は、経済体制改革の深化を背景に、国有企業は再編や提携、買収などの事例が多くなっており、企業の破産に対する法的な手続きが整ったと強調している。
常務委員の1人は、「旧破産法はとっくに『時代遅れ』となっており、市場経済化の進展に見合った破産法を早く制定する必要があった」としている。
新破産法の成立で、10万社ともいわれる不採算の国有企業が破産宣告を受けた場合、従業員たちの処遇が従来とは大きく変わることになる。
これまでは、企業が破産した場合、従業員の給与など無担保の労働債権の清算が優先され、一般債権者が担保としている破産企業の保有する資産の中から清算が行われてきた。
このため、破産企業の一般債権者よりも従業員が手厚い扱いを特別に受けてきた。
しかし、新破産法はこうした従業員に対する特別扱いをせず、債権者とのバランスを考慮して清算手続きを進めることを規定している。
従業員と債権者のどちらを優先するかをめぐっては法案の審議の中で長年にわたって議論が続けられてきた。
この常務委員は、「従業員の権利を重視する必要はあるが、市場経済の流れや国際ビジネスの慣例にも対応した内容が、新破産法に求められている」と解説している。
企業破産時に担保債権が保障されなければ、公平な清算が行われないことになり、外資の対中投資意欲を削(そ)ぐことにつながるという政策的判断がはたらいたようだ。
■先行き不安
北京の通信機器メーカーに勤める従業員は、「今後は企業が破産しても、給料が優先的に保障されないことになる。今は業績がいいが、先行きを考えると不安だ」と率直に話す。
労働組合の全国組織、中華全国総工会が今年上期(1~6月)に、山西、安徽、福建など6省で調査した結果、破産した国有企業の未払い給与や医療費など社会保障費の合計は17億4400万元(約252億円)にのぼるという。
中国人民大学の王欣新(おうきんしん)教授は、「労働者の権利を守りながら、市場経済の秩序と社会保障システムを整備すべきだ」と指摘する。
国務院の統計では、昨年破産処理された国有企業は3658件で、08年までに、さらに2000件の企業が政策的に破産させられる見通しだという。
市場経済化の大波の中で国有企業の倒産、閉鎖の憂き目に遭った労働者は再就職先が見つからず、生活に困窮する場合も少なくない。
中国経済が優勝劣敗の市場原理で発展する一方で、社会に取り残される人々の生活をいかに保障するか。中央、地方政府の大きな課題となる。