災害時には“命の泉” ウェルシィの井戸水利用した自家用給水システムが注目

井戸水を利用した自家用水道システムが、災害時の給水手段として注目されている。地震災害などで公共上水道がストップしても、自家用水は供給される可能性が高いためだ。業界最大手のウェルシィ(東京都千代田区、福田章一社長)が今年8月末までにシステムの導入契約を結んだ台数は昨年の2倍に上る。7月以降に導入した施設のほとんどは、緊急時に地域住民に給水することを決めており、同社では「震災対策としても普及させていきたい」としている。

 節電機メーカーだったウェルシィが、井戸水利用の給水システム開発に取り組み始めたのは、顧客から「水道料金が高いのは、官の独占でシステムが古いため。安くできる余地があるはず」とアドバイスされたことがきっかけだった。それから2年たった平成9年に第1号機が完成。水道料金を20~30%節約できることをうたい文句に、営業活動を展開した。

 だが、このシステムが注目されるようになったのは、平成16年10月の新潟県中越地震から。導入先の敷地に井戸を掘り、そこから直接くみ上げた井戸水を敷地内の特殊な濾過(ろか)システムで浄化するため、地震によって配管が破損する危険性が少ないためだ。

 給水がストップすると診療機能に重大な支障をきたす病院では、特に関心が高い。8月末現在で同社のシステムを導入した施設はスーパーや宿泊施設、工場などさまざまだが、導入した563カ所のうち3分の1を超える210カ所が病院だ。

 病院ではさらに、地域住民への給水にも力を入れている。

 東京都狛江市の慈恵医大第三病院では16年12月、1日の利用水量200トンを上回る最大480トンの井戸水を飲料水に利用できるシステムを導入した。利用水量を超える能力にしたのは、「震災時に地域住民に給水するため」だが、それでも年間1億3000万円かかった水道料金を2割近く抑制できているという。

 今年9月1日には、狛江、調布両市と防災協定を締結。大規模地震で見込まれる3万人の被災者に対する水を同病院が確保する一方、両市が病院の敷地内に防災倉庫を設置することになった。倉庫には震災時に水を配るためのパックなどを貯蔵し、両市は被災者への給水活動も行う。

 ウェルシィは7月以降、システムの新規導入施設に震災時の給水を提案。これを受けて10以上の病院などが地域住民への給水を決めた。

 福田社長は「導入施設は現段階では600カ所に満たないが、目標は2000カ所。そこまでいけば震災時に公共上水道がストップしても、そう遠くない場所から井戸水を利用した飲料水を供給できる」と話している。

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