英金融大手のHSBCは6日、日本で個人向け金融業務に参入すると発表した。金融資産1000万円以上を持つ富裕層を対象に金融サービスを提供する。外資系金融機関では米金融大手のシティグループも富裕層ビジネスの強化を打ち出している。国内の大手銀行グループも新たな収益源として力を入れており、顧客の争奪戦は一段と激しさを増しそうだ。
HSBCでは、金融庁の認可を受け次第、東京と大阪に「HSBCプレミアセンター」を開設。顧客ごとに「リレーションシップマネジャー」と呼ばれる専任の担当者を付け、資産運用などの相談に応じ、外貨預金や投資信託、個人年金保険、ローンなどの金融商品を提供する。
すでに35カ国・地域に250カ所のプレミアセンターを設け、200万人以上の顧客に同様のサービスを提供しているという。
HSBCでは「対象となる『マス富裕層』は、首都圏と関西圏だけで約650万人いる」と推計。同グループの香港上海銀行のステュアート・ミルン在日代表兼CEO(最高経営責任者)は「個人金融業務に参入することで、日本での存在感をさらに高めていきたい」とコメントした。
日本では、団塊の世代が退職金を手にするほか、少子化の影響で遺産相続が集中することもあり、HSBCが「マス富裕層」と呼ぶ資産が数千万円規模の顧客が今後も拡大すると見込まれている。また、「貯蓄から投資へ」の流れも加速しており、資産運用などの相談サービスに対するニーズも高まっている。
外資系にとっては1500兆円に上る日本の個人金融資産の魅力は大きい。すでに米シティが7月に在日支店を現地法人の「シティバンク銀行」に格上げし、さいたま市や千葉市など郊外都市に5カ所の支店・主張所を相次いで開設。数億円の資産を持つ富裕層をターゲットにした営業戦略に乗り出している。
一方、国内の大手銀行各行も、法人向け貸し出が伸び悩むなか、金融商品やサービスの提供で手数料収入を得ることができる富裕層ビジネスを強化。顧客の囲い込みのため、高級住宅街などに相次いで「相談特化型店舗」を出店している。
三菱東京UFJ銀行では、預かり資産数千万円以上の顧客を対象にした会員制店舗「プライベート・バンキング・オフィス」を展開。09年3月末をメドに全国30店まで増やす計画だ。みずほ銀行は「みずほパーソナルスクエア」を08年末までに70店舗を開設する。りそな銀行も「りそなパーソナルステーション」の新規出店を進めている。
このほか、不動産を含む資産運用に強みを持つ信託銀行各行でも、店舗窓口をカウンター型から個室型に改装するなど、富裕層の相談ニーズに対応できる店舗作りを急いでいる。
HSBCの参入について、大手銀行幹部は「1000万円以上という比較的広い層をターゲットにしてきたのは脅威だ。既存の金融機関とどんな点でサービスの差別化を図るか注目したい」と警戒を示している。
◇
【用語解説】HSBCグループ
持ち株会社であるHSBCホールディングスは英国に本部を置き、83カ国・地域に1万店超の拠点を展開。2007年6月末で2兆1500億ドル(約247兆円)の総資産と1億2500万人超の顧客を持つ。グループ中核企業である香港上海銀行(本店・香港)は日本では東京と大阪に支店を置き、法人向け金融サービスを提供している。