経済対策に「埋蔵金」 与野党食指、遠のく財政再建

解散・総選挙を控え、社会保障費や経済対策の財源として、特別会計の積立金などの「霞が関埋蔵金」を活用しようという流れが強まってきた。米金融危機の最中での選挙となりそうなため、与野党とも増税せずに財源を生み出すことが可能な埋蔵金を経済対策などに活用する方針を打ち出している。“財布”を預かる財務省は埋蔵金の乱用を牽制(けんせい)しているが、高まる政治圧力の中で、財政再建が遠のきそうな情勢だ。

 民主党の菅直人代表代行ら同党議員は2日、埋蔵金の一つとされる外国為替資金特別会計の管理や資産運用などの実態を把握するため、東京・霞が関の財務省を訪れた。議員らは外為特会の資産を運用する資金管理室を視察、同省幹部と意見交換も行った。野党議員らが実際に資金管理室を見学するのは異例という。

 菅氏は視察終了後、記者団に対し「(埋蔵金は)かなりあります」と述べ、財源として活用できるとの認識を強調した。民主党のマニフェスト(政権公約)では子ども手当や高速道路無料化などの政策の財源として特会の積立金や政府資産売却などで埋蔵金7.2兆円を手当てするとしている。

 一方、麻生太郎首相は9月の自民党総裁選の議論の中で、2009年度から基礎年金の国家負担率を3分の1から2分の1に引き上げる政府方針の財源として、「消費税を上げるまでの間、特別会計などの剰余金を使わせていただくのも一つの方法」と主張。景気後退色が強まる日本経済を「全治3年」とする麻生首相は、増税を避けるための財源捻出(ねんしゆつ)を模索している。

 首相はまた、米金融危機に伴う日本経済への波及が深刻化する中で、国会答弁で「(総合経済対策の補正予算が)どのような効果を持つか見極めた上で、必要に応じさらなる対応を弾力的に行う必要がある」と強調。政策減税や追加的経済対策にも積極的な姿勢を示した。

 公明党の太田昭宏代表もこれまでに、総合経済対策に盛り込んだ定額減税の財源に「無駄をなくしたり特別会計の余剰金や積立金を緊急事態ということで使おうとも考えている」と言及。選挙対策もあって、与野党そろって埋蔵金の利用をとなえ始めた。

 これに対し財務省幹部は「特会の積立金、準備金はその目的がある」と、必要経費として蓄えていることを強調。杉本和行財務次官は記者会見で「慎重な検討が必要」と何度も予防線を張っている。

 特会の積立金は06年度末で約196兆円。その約8割は年金など保険支払い用の資金で、どこまで財源となるかは不透明。政府内でも「埋蔵金があるとしても、国の借金を返済するために国債償還に充てるのが優先」との声もある。

 埋蔵金は安易な財源捻出策との批判もあるが、景気後退が深刻な問題となる中で、そんな論理はかすんでしまいがち。このまま選挙に突入すれば、与野党どちらが勝っても、埋蔵金の利用は避けられず、財政再建論はより一層ピンチに立たされている。