金融庁 返済猶予法「注意事例集」 貸し渋り 検査もとに判断基準
個人向け住宅ローンや中小零細企業向け融資の返済猶予を含む「中小企業等金融円滑化法」(モラトリアム法)の施行を受け、金融庁は21日までに、金融機関向けの注意事例集を公表した。検査で「貸し渋り・貸しはがしに当たる」と判断した事例を集めた金融機関の「やるべからず」集で、住宅ローンの事例公表は初めて。金融庁は、金融機関だけでなく、条件変更を要請する側の顧客にも活用してほしいと期待する。
金融庁は、4月から7月にかけて行った検査で、貸し渋り・貸しはがしの実態を把握し、メガバンクなどの主要行、地域銀行、信用金庫、信用組合など計56金融機関を対象に、「要注意」と指摘した事例を公表した。
住宅ローンでは、不況による収入減や失業で条件変更を希望する顧客の事情を十分に把握しないまま、金融機関が条件変更の申し込みを断った例が主要行を中心に数多く見つかった。
具体的には(1)顧客が将来、ローンを返済できるかどうかを精査しないまま、返済期限の延長要請を拒否(2)かつて条件変更に応じた顧客が再び返済に行き詰まって2度目の要請をした際、「変更は1回限り」と拒否(3)条件変更に応じる基準や手続きがあいまいで、部署ごとに対応がまちまちだった-などだ。
新規融資でも、顧客の年齢や収入が審査基準に合うかどうかの検討を十分に行わないまま拒否し、その理由を記録していないなど、管理手続き上の不備もみられた。
中小企業向け融資でも、主要行を中心に「要注意事例」が多く見つかった。具体的には(1)現在は赤字だが「将来の黒字化が見込める」と説明した企業に対し、事情をよく聞かずに大幅な金利引き上げを要求し、交渉がまとまらずに債権を回収(2)経営不振の企業からの融資継続の要請を、経営が順調なグループ企業の状況を勘案せずに拒否(3)企業から準メーン以下の金融機関に対する短期つなぎ資金の要請を、「支援はメーン行が行うべきだ」と拒否-など。
モラトリアム法施行にあたり、亀井静香金融相は「金融機関が企業のコンサルタント的な役割を果たすべき」と強調した。だが、今回公表された事例はすべて「不適切な対応」といえ、顧客側に交渉の余地があることになる。金融庁は引き続き、金融機関に、条件変更にできる限り応じる態勢づくりを要請していく。